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宵闇
第10章 葉月
深く吐いた息。
引き出しから煙草を取り出して、火をつけた。
……時々、無性に吸いたくなる時がある。
部屋の明かりを消し、煙草をくわえながら静かに窓を開ける。
夏の暑さはだいぶ落ち着いてきていた。
もう秋か────。
外に、目を遣る。
闇で真っ暗なはずの外は、月の光で少しだけ明るい。
部屋の中に視線を戻すと、ベッドが視界に入った。
そこに、彼女が横たわっている。
軽い寝息をたてて。
……琴音────。
とうとう触れてしまった。彼女に。
僕にしがみついて泣く彼女が痛々しくて、無意識のうちに身体が動いていた。
「……ばかだな、僕も」
一度でも触れてしまったら、この先……今までよりもっとつらくなるだけだとわかっていたのに────。