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宵闇
第11章 惑い
「──和美、そろそろ行こうよ」
そのとき突然、すぐそばで聞こえた声。
我に返って思わずそっちに目を向ける。
松下さんという人も私を見てきて、目が合う。
「ごめんね、妹さん。
桜井くんとのデートの邪魔して」
その、優しい笑顔。
私の中のもやもやが一瞬消えた。
「あ、いえ……そんな」
思わず首を振ると、それにまた、ごめんね、と少し困ったように微笑まれた。
「ほら、和美」
視線はすぐに小野さんへと移り、かけた声。
「え~……せっかく外で会えたのに~」
促された小野さんはそう渋りながらも、それでも松下さんに従った。
はいはい、と葉月くんとの話を終わらせる。
「桜井くん、じゃあまた会社でね!」
そう言って手を振りながら歩き出す。
松下さんも、私と葉月くんに向かって小さく手を振ってくれ、そのまま小野さんと一緒に歩いて行った。