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宵闇
第11章 惑い


映画が終わって────。


「やっぱりこのシリーズ面白いね」


シアターから出ながら葉月くんに言われた私は、相づちを打つ。
というか、話される内容に、うん、とか……だよね、とか、そんな言葉しか返せなかった。


……どうしよう。


だってほんとは映画の内容なんてほとんど頭に入ってこなかった。
頭の中のもやもやは消えなくて、そっちにばっかりいっていた意識。

せっかく、ふたりで観に来たのに────。


でもそんな私の様子には幸い気づかれていないようで、さてと、と葉月くんが腕時計を見た。


「これからどうする?
ちょっと早いけどごはんでも行こっか?」


そしてそう声をかけられたとき


「あ、実はこれから加奈と約束あって」


私は咄嗟に言ってしまった。
約束なんてないのに──思わず、そう嘘をついてしまっていた。


「え? 加奈ちゃんと?
……そうなの?」


覗き込まれた顔。
まっすぐに私を見てくるその目に心臓が早鐘を打つ。


「ん……なんかね、急なんだけど……相談があるらしくて。
映画観終わったら話聞きにすぐ帰るから、って言っちゃったの」

「……そうなんだ」


その言葉と共に、離れていった視線。


「ごめんね?」


追いかけることもできず、うつむいたままで謝った。


「加奈ちゃんは琴音の大事な友達だもんね」


わかった、とかけられた言葉に胸が痛くなる。
ちらりと葉月くんを見上げると、ん? と優しい笑顔が返ってきた。
私が嘘を言ってるなんて思ってもいないんだろうな──と、感じた罪悪感にたまらずその笑顔から逸らした視線。


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