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宵闇
第11章 惑い


そのまま駅まで一緒に歩いて、改札で別れた。


「……ごめんね、またメールするね」

「うん、気を付けて」


頷き、じゃあね、と葉月くんに手を振る。
葉月くんも同じように返してくれた。


改札を通って、葉月くんの姿が見えなくなるところまで来たとき、自然に足が止まった。
はあ……と大きく吐いた息。


……何やってるんだろう、私。
どうしちゃったんだろう。
葉月くんにこんな嘘までついて────。


とぼとぼと歩き出し、ホームへ向かう。

電車はすでにきていた。
乗り込んで、空いている席に座る。


「はあ……」


また、溜め息が出た。


……なんなんだろう、さっきからのこのもやもや。
すごくいやな感じだ。


あの女の人が、葉月くんに触ったとき──やめて、って思った。
葉月くんに触らないで、って思ってしまった。
なんだか不快で……仕方なかった。


どうしよう────。


この感情は、たぶん……この前思ったそれと同じところから生まれてる。


……だめ。
だめだから────。


膝の上で、ぎゅっと固く握りしめた手。


……これ以上、葉月くんを想っちゃだめ。
私は妹なんだから。
だからちゃんと自分の立場をわきまえなくちゃだめ。


何度も自分に言い聞かせる。
この前もそうしたことを、また。


あんな場面、これからだってきっと目にする。
そのたびにこんな私になっちゃったら、あやしまれちゃう。感づかれちゃう。
葉月くん……勘いいから。
私のこと、すごくよく見てくれてるから。


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