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宵闇
第11章 惑い
「言ったじゃん。ずっとおまえのこと見てたって。
……好きな相手なんて他に思いつかねーって……」
ため息混じりの、その独り言のような言い方。
「……うん」
肯定し、俯く。
そこまでわかられているなら、もうそれ以外他に何も言えなかった。
呆れられたかもしれない。
だって兄を好きになってしまうなんて──もちろん、義理の兄だってことは村上くんも知ってるけど、でも────。
「桜井」
そのとき、村上くんが近づいてくる気配がした。
「それでもいいって言ったら?」
私のすぐそばまで来て口にしたその言葉の意味は────。
……それでも?
それでもいいって……え……?
そっと顔を上げた私の目に映った、村上くんの真剣な表情。
「……おまえの気持ち、葉月先輩知ってんの?」
混乱している状態のまま落とされた新たな問いに、頭がうまくついていけない。
考える余裕もなく、首を振る。
「言わないの?」
「……だって私……妹としか見られてないから」
それを言葉にすると、胸の奥がぐっと詰まった。
本当に……なんて絶望的なんだろう。
妹という立場をあんなに嬉しく思っていたときもあったのに、想いに気づいた今はその肩書きがこんなにも苦しい。
「じゃあ桜井はずっとそうやってくの?
先輩には何も言わないでただ想い続けてくの?
……他には目を向けずに?」
ずっとそうやって──なんて、そんなのわからない。
わからないけど、でも今は葉月くんのことしか考えられない。
他の人と付き合うなんてきっと無理。
だって葉月くんのことをこんなにも好きなのに、そんな状態で何をどう出来るっていうの────?