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宵闇
第11章 惑い
私も思った。
葉月くんを嫌いになれたら、って。
でもどう考えてもそんなふうにはなれなくて。
葉月くんに嫌いな部分なんてこれっぽっちも見つけられなくて……反対に、考えれば考えるほど好きになってしまって。
また涙が零れた。
村上くんの気持ち。
痛くて。苦しくて。
自分でも覚えのあるその感情は、より深く……私を襲う。
「……まあ、何されたって俺はおまえを嫌いになんてなれないのはわかってるけど────」
……ほら、また私と同じ……。
ままならない感情に翻弄されているのは、私だけじゃなくて……村上くんも、なんだ。
「葉月先輩への想いには先がないんだろ?
だったら俺を利用して……少しずつでも忘れてけばいいじゃん」
忘れる?
この想いを?
……忘れられるの?
「……そんなのきっと無理だよ……」
そんな日が来るなんてとても思えない。
だって……来るんだったら、きっと今頃もうそうなってた。
不意に伸ばされてきた指先に、目元を拭われる。
それならそれでもいいから──と、聞こえた呟き。
そのまま手のひらで頬を撫でられ……村上くんが、ゆっくりと顔を寄せてくる。
それは唇が触れ合う直前だった。
一瞬、村上くんの動きが止まったのがわかったけど──そのまま、口づけられ。
逃げようと思えば逃げられたと思う。
村上くんも、拒む猶予を与えてくれてた。
──でも、私はそれを拒めなかった。