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宵闇
第11章 惑い


彼のことを好きになれたなら、どんなに楽になれるだろう。
私をずっと好きだったと言ってくれる村上くん。
これ以上ない男の友達として、私も彼を心から大事に思っている。

……形から入ることで、その感情は恋愛のそれへと変わっていけるんだろうか。
私は彼を異性として好きになっていけるんだろうか────。


考えてもわかるわけのない、曖昧な……望みにも似たその感情に私は縋るしかなかった。

こんな私をそれでもいいと求めてくれる村上くんの想いが自分の感情とリンクしてしまい、もう……これ以上拒めない。
それでも拒み切れるほど、私は強くない────。


ずるいね、と心の中で私が私を非難する。
……ずるいよね、とそれを肯定する私がいる。


私を抱きしめながら村上くんが、好きだ、と囁く。
桜井が好きだ、と。
どこか苦しそうに。
忘れさせてやるから、と。
吐息混じりで。


……報われない想いを互いに抱いている私たちは、その傷を慰め合うような──結局はそんな関係にしかならないんだろう。

たぶん、村上くんもそれはわかっているはず。
わかっていて、でも……それでもいいと────。


叶わない想いを抱く私。
そんな私に想いを抱く村上くん。

……きっと、苦しくなるんだろう。
いつかもっと、そうなるんだろう。


それは私の確信にも似た、予感。


それでも、村上くんの身体を振りほどくことなんてできなかった。

……そう、想いを知ってもなお、私を受け入れようとしてくれる彼のことを今は、私は────。




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