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宵闇
第11章 惑い
──そのまま、どれくらいの時間が過ぎたのか。
先に村上くんが目を逸らし、体勢を変えようとしたせいか、ぎしっと鳴ったベッド。
反射的に目を閉じた私は
「……やっぱやーめた」
突然聞こえた、この場に不似合いな明るい口調に、え……と再び目を開く。
視界に入ったのは、身体を起こした彼が、私から離れようとしているところだった。
「村上くん……?」
そのまま背を向けられ、戸惑いながら呼んだ名前。
向こうを向いたまま、村上くんが手だけで私に差し出してきたのは自分のTシャツ。
「着ろよ」
身体を起こしながら、躊躇いつつも受け取る。
「ごめん……!」
そしてそんなふうに突然謝られ────。
「俺……焦ってた。まだ早すぎたよな、ごめん」
「村上くん────」
「ちゃんと待つって言ったのに。
はは……つい、がっついた」
わざと笑いの混じった口調で、雰囲気を悪くさせまいとしてる彼の姿に、ぎゅっと胸が締め付けられた。
「……おまえもさ、無理して俺に合わせなくていーよ」
「え……」
振り向いた彼が
「──って! 着てねーし」
刺激強すぎなんすけど、と困ったようにまた前を向く。
その言葉に、私は受け取ったTシャツを身につけた。
「……だから。俺にさ、合わせなくていーから。
桜井がほんとにそうなってもいいって思えるようになってからで」
「村上くん……」
「待つのなんて慣れてるっての」
私を気遣う明るい口調は続く。