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宵闇
第11章 惑い
……だめ。
こんな気持ちで村上くんに抱かれるなんて────!
「村上くん……っ……」
目を開け、思わず彼の名を呼んだ。
私を好きだと言ってくれてる彼のことじゃなく、他の人を考えながらなんて……そんなの、村上くんに対してひどすぎる。
だから────。
「……ん?」
止まった、指先と唇。
「何……?」
両肘を私の顔の横につき、至近距離から私を見下ろしてくる。
薄明かりの中、朧気に見える彼の表情に、待って──そう言おうとしていた私の唇は動かせなくなった。
だってその目。
揺れているその瞳が、なんだかとても哀しそうだったから。
まるで私の言葉を予期しているかのように……そんなふうに感じて。
……ここまで許しておいて、待ってとか。
そっちの方が、ひどいのかもしれない。
そう思ってしまった私は、どうしたらいいかわからなくなった。
もう何も言えなくなってしまった。
「……なんでも、ない……」
それだけを呟いて首を振る私を村上くんはじっと見下ろしてくる。
私も、目を逸らせずに見つめ返す。