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宵闇
第13章 衝動


唇を離した葉月くんが、吐息混じりに言った。


「琴音……今、体調……」


それが何を意味しているのかはすぐにわかった。
きっと葉月くんも私と同じ気持ちだと思ったから。


「……大丈夫」


予定では生理がくるのはもう少し先だった。


「じゃあ……行く?」


僕の家──と続けられ、合わせられた目にどきりとする。
それは、ゆらりと見え隠れする葉月くんの『男』の目。
くらりとさせられながら、頷いた。


「行きたい……」


だってもうキスだけじゃ物足りない。
もっと……もっといっばい、葉月くんと触れ合いたい────。


わかった、と言って葉月くんは触れるだけの軽い口づけを私の唇に落とし、運転席へと身体を戻した。


「すぐ着くから」


動き出した車。

私は黙ったまま、ただ静かに胸を高鳴らせていた。


やがて葉月くんが左手を私に伸ばしてくる。
私はそれを両手で握った。

私の大好きな葉月くんの手。
細くて長い、その綺麗な指。

思わず頬ずりした。
そのまま唇に持っていって、そっと口づける。
何度も、何度もそうする。


「琴音……あんまり煽らないで」


困ったような口調で葉月くんが言った。


「だって……」


さわりたいんだもん。
葉月くんに少しでも触れていたいんだもん──そう心の中で答えながら、また、口づける。


「だーめ。もう少しだけ我慢して?」


苦笑い混じりの言葉に、なぜかきゅんとする。
葉月くんの言動のひとつひとつが私を高まらせていくのを自覚しながら、はあいとおとなしく従った。


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