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宵闇
第4章 琴音
「……ママやお父さんがいたって。
加奈がいたって──違うんだよ、葉月くん」
葉月くんは、私にとって誰かが代わりになるとか、もうそういう存在じゃないのに────。
葉月くんと暮らしたのはたったの2年半だった。
でも、ふつうの兄妹よりもきっとたくさん話したと思う。
ただでさえ大変なママに、私のことでよけいな心配をかけないように……そう思ってずっと生活していた私が、唯一甘えられたのが葉月くんだった。
甘えさせてくれたのが葉月くんだった。
……なのに。
今日から、その葉月くんがいない生活が始まるなんて────。
頼りきっていた存在がなくなるという現実。
今はただ、溜め息をつくことしかできなかった。