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宵闇
第4章 琴音
「長期休暇のときは帰ってくるよ」
葉月くんの言葉に頷いたものの、気持ちは下がる一方だった。
「琴音、寂しいわね」
ママが私の気持ちを代弁してくれる。
それにも、ただ頷く。
「すぐまた会えるから」
葉月くんが下を向いてる私の頭をぽんと撫でた。
そして、ここでいいです、と玄関で別れようとする葉月くんを、私は外まで少し追いかける。
「……ねえ! 葉月くんがいなくなったら、私、これから誰に相談すればいいの……!?」
その後ろ姿に思わずそんな言葉が口をついて出た。
少しの間を置いて振り向いた葉月くんは微笑んで答える。
「雪乃さんもいるし、父さんだって。
仲良しの友達もいるでしょ? だから琴音ちゃんは大丈夫だよ」
そしてまた、私の頭をぽんと撫でた。
「……じゃ、行ってくるね」
そう言って葉月くんがお父さんの車に乗り込む。
開けられた窓。
車が静かに動き出した。
葉月くんが振る手────。
……車が視界から消えるまで、ずっと、見ていた。