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宵闇
第18章 動き出す
それから、数日後────。
実家の玄関前に僕は立っていた。
仕事がない日はずっと琴音とばかり過ごしていたから、来るのはかなり久しぶりだった。
父さんも、雪乃さんも、ふたりとも今日は家にいるという。
──だから、来た。
「おお、葉月! 久しぶりだなあ」
ただいま、と声をかけて中に入ると、リビングにいた父さんが笑いながらそう声をかけてきてくれる。
「元気そうだな。仕事の方はどうだ?」
「うん、まあ何とかやってるよ」
「そうか。琴音もなあ、なかなか帰ってこないから母さんが寂しがってるんだよ」
「別にそんなことないわよ~」
リビングから続いているキッチンにいた雪乃さんが口を挟んできて。
「葉月くん、おかえり!」
そう言って笑って、僕を見た。
あらためて、琴音は母親似なんだなと……なぜかそんなことを思う。
「葉月くん、最近琴音と会ってる?」
「……え?」
さらりと口にされたその言葉に、はっと我に返った。
少し動揺したものの、他意はなさそうな様子に気を取り直しすぐに答える。
「あ……はい」
「そうよね。こっち帰ってくるより葉月くんちの方が近いんだものね。
……あの子、元気でやってるのかしら。
たまには家に帰るように葉月くんからも言っててくれる?
私が言っても、はいはいって濁して終わりなんだもの」
口元に浮かべた困ったような、けれど本当はそうでもなさそうな、そんなふうにも見える笑み。