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宵闇
第18章 動き出す
「ね? お父さんが寂しがって泣いてたぞー、とでも言って」
「そうだ。頼んだぞ、葉月」
間髪入れずのその言葉。
思わず苦笑してしまう。
……苦笑して、それから。
これから発するつもりの僕の言葉が、この雰囲気をどう変えてしまうのか──それを考えて、少しだけ緊張した。
もちろん、反対されても琴音を手放す気などさらさらないけれど────。
「葉月くん、何か飲む~?」
雪乃さんの明るいその声を、僕は首を振って断った。
「いらないの?」
その言葉に、父さんの視線が僕へと向けられたのがわかった。
「……どうした?
突然帰ってくるなんて珍しいなと思ったが、何かあったか?」
続けて問われ、なら──と僕は覚悟を決めた。
帰って早々に、とは思ったけど、どのみち言わなければならないことだ。
そのために僕はここへ来たのだから。
僕は一度大きく息を吐き、それから口を開いた。
「……実はね、父さんと雪乃さんに大事な話があって」
「ん?」
「それ、聞いてほしくて……だから帰って来たんだ」
「……そうか」
ソファーで、父さんが座り直す。
その表情からは笑みが消えていた。
「──ならまず私が聞こう」
そう言って、雪乃さんを見る。
「そうね……。
じゃあ……書斎使ったら?」
「そうしよう」