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宵闇
第18章 動き出す
「……ふたりは何て言ってた?」
上目遣いで僕を見ながら。
「うん──父さんはすぐに許してくれたよ」
「え?」
「反対はされなかった」
ほっとしたように緩んだ表情は
「……え? お父さんは、ってことは────」
けれどすぐにそこに気づいて、じゃあママは……と不安そうなものへと変わる。
「雪乃さんからは……その場では許してもらえなかった」
つらそうに歪む彼女の表情。
少し目が潤んでいるように見える。
「でもあからさまに反対されたわけじゃないから」
「……どういうこと?」
「うん。まずは琴音と話がしたいって言われたんだ」
「え?」
「僕と話すのはそれからにしたい、って。まずは琴音とちゃんと話したいって」
「……ママが、そんなこと」
琴音は不安そうな顔を隠せずにいる。
そんな表情を見ると、僕もつらくなり──つい、聞いてしまった。
「……もし、雪乃さんがだめって言ったら琴音は諦めるの?」
「え……?」
「僕たちの結婚」
「────っ……」
それには大きく首を振り
「やだ……!」
はっきりと、それを否定した。
その反応にほっとして、よかった……と思わず呟く。
「……私、ちゃんと言うから」
そんな僕に琴音はそう告げてきた。
「ママと、ちゃんと話する。
わかってもらえるように頑張る」
「……ありがとう、琴音」
僕は微笑んで、テーブルの上の琴音の手を握った。
「絶対、一緒になろう」
その言葉にようやく笑顔を見せ、頷いた琴音。
「うん。なろうね」
繰り返された言葉。
僕たちはあらためて、思いをひとつにした。