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宵闇
第18章 動き出す
琴音が教えてくれた店で、ふたりでゆっくりと食事を楽しんだ。
食後のコーヒーが運ばれてきてから、例のことについて話をするべく口を開く。
「実はね、琴音」
「んー?」
彼女はコーヒーにミルクを注ぎながら、声だけを僕に寄越した。
「今日、家に行ってきたんだ」
「……え?」
その手が止まり、視線が僕へと向けられる。
「……そうだったんだ」
また、コーヒーのカップへと落とされた視線。
「父さんと雪乃さんに、琴音と結婚したいって話してきた」
コーヒーをスプーンでゆっくりとかき混ぜながらしばらく黙っていた琴音が、ようやく口を開く。
「……なんだか葉月くんにだけ大変な思いさせちゃったね。
言ってくれれば私も一緒に行ったのにな」
その表情はちょっと不満そうにも見えた。
「うん。でも最初は僕ひとりで行きたかったんだ」
「……そっか」
「ごめんね」
ううん、と琴音が微笑んで首を振る。
それから、当然気になっていたであろうことを口にした。