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宵闇
第19章 枷
食事のあと、もうすぐ誕生日だという加奈ちゃんにプレゼントを選びたいと言う琴音に付き合うため、ショッピングモールへと向かった。
モール内で、琴音のお目当ての店舗へ行く途中、書店の前を通った僕は気になっている本があったことを思い出す。
「琴音、ちょっとここ寄っていいかな?」
「あ、うん。
……じゃあ私は先にお店行ってるね。いろいろ見たいんだー」
「わかった」
そう言って、一度そこで別れた。
目当ての本はすぐに見つかる。
帯の説明を読んだりしてそこで少し悩んだものの、結局買うことにした。
購入した本を手に、琴音がいるはずの店へ向かっていると────。
「……琴音?」
店の手前の通路に、彼女の後ろ姿が見えた。
そして、彼女の前に立ちふさがるようにしている、ふたりの男。
何か話しかけられているのか、声は聞こえないが琴音は首を振っている。
「……っ!」
駆け寄るようにして、琴音の腕を後ろから掴んだ。
びくっ、と身体を震わせて振り向いた彼女の強張った顔が、僕の姿を認めると、ほっとしたように緩む。
「葉月くん……」
琴音の腕を引き寄せるようにして、抱き留めた。
「彼女に何か用ですか?」
そのまま彼らを見て、言う。
顔を見合わせた彼らは、別に、と言ってすぐに去って行った。
「大丈夫? 絡まれたの?」
「ううん。ひとりなのか、ってちょっと声掛けられただけ」
「本当に?」
こくんと頷きながらも
「でもちょっとしつこかったから、葉月くんすぐ来てくれてよかった……」
ぽつりとそうこぼし、僕に笑いかける。
少しぎこちない笑みだった。
「──プレゼント、ここの店で?」
彼女の頭を撫でながら話を変えると
「あ、うん!」
面白いのいろいろあるんだよ、と笑みを深くして、僕の腕を引き店へと入っていく。
引かれるままに僕は彼女のあとを着いていった。