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宵闇
第19章 枷


無事に買い物を済ませ、ほかに気になっている店も覗いてみたりしながら車に戻った。


「……7時か。
おなかすいた?」


琴音に聞くと、お昼遅かったから、と首を振る。


「だよね。僕もまだ────」


不意に琴音の口が何か言いたそうに開かれた。


「ん?」


どうかした? と顔を覗き込むと、一瞬目が合ったものの逸らされる。
でもまたすぐに、琴音の方から躊躇いがちに視線を合わせてきた。


「えっと……明日ってお仕事?」

「ん? 休みだよ?」

「……じゃあ何時までこっちにいられるの?」


もう少しいられる? と、上目遣いで続けてから、恥ずかしそうに俯く彼女の言いたいことを僕はすぐに察した。
琴音の手を握ると、琴音も、握り返してくる。


「……加奈ちゃん、家にいるんだよね?」


頷く彼女に


「じゃあ──ホテル、行く?」


そう誘うと、やっぱりまた、頷いて。


ん、と僕は繋いでいた手をそっと解いた。
そのまま琴音の頭を撫でてから、車を発進させる。


「今日は帰らないって加奈ちゃんに連絡しておいて?」


運転しながら琴音に言うと


「え……ってことはもしかして葉月くん泊まれるの?」


視線を感じた僕は、ちらっと彼女を見て、うん、と頷いた。
琴音が、嬉しそうに頬を緩ませてバッグから携帯を取り出す。
加奈ちゃんにメールを打つのだろう。


「外に泊まるのって初めて……!」


素直に弾ませる声──可愛い。
本当に、琴音の仕草ひとつひとつに僕はいつもたまらなくさせられる。
彼女はどこまで僕を夢中にさせれば気が済むんだろう、とそんなふうに思って、つい苦笑してしまった。


「……どうしたの?」


見られていたのか、琴音に聞かれる。


「ん? いや──琴音が誘ってくれるなんて嬉しくて」

「えっ!? 
……そ、そんなんじゃないもん!」


慌てたように言い、もう、と再び携帯に集中するその様子すら、愛らしくて仕方がない────。


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