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宵闇
第19章 枷
はあはあと、荒い息のまま彼女を見る。
目を閉じて余韻に浸っているその目元。
微かに滲んでいる涙を唇で舐め取った。
「好きだよ……」
僕の欲望を受け止めてくれたその身体。
耳元にそっと囁く。
彼女は妹なんかじゃない、と思っておきながら、誰よりも自分が兄という立場に囚われていた。
頭の中がぐちゃぐちゃになるほどの想いを抱えていても、そんな姿は琴音には見せるべきではないと。
僕は、兄なんかじゃなくて恋人なのに。
そう──琴音に選ばれたただひとりの男なのに。
琴音が求めているのは恋人としての僕なのに。
琴音が、それを教えてくれた。
やっと気づいた。
……気づけた。
「琴音……」
目を閉じていた彼女が僕の声にうっすらと目を開ける。
僕にそっと伸ばされた手を取って、そのまま彼女を包み込むように抱き締めた。
「……大好きだよ」
その言葉に、琴音は小さく頷く。
僕は繰り返した。
何度も、何度も。
それはまるで呪文のような。
──すべてが、満たされていた。