この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
宵闇
第20章 条件

「それから一緒に暮らし始めて1か月ぐらい経った頃かしら。
……やっぱり再婚はやめた方がいいのかな、って正直思ってたのよ」
「え?」
私は、そんなこと初耳で。
だってみんな仲良くやれてるって、そう思ってたから。
慣れない生活ではあったけど、でもママが幸せになれるなら、ってだんだんそんなふうに思えるようになっていってたから。
「琴音」
名前を呼ばれ、はっとしてママを見る。
「琴音にとっては本当に大変だったと思うわ。
知らない男の人たちと、いきなり一緒に住むことになったんだもの」
「え……」
「それまでずっとママと二人だったのにね」
その言葉に、どくん……と心臓が大きく波打った。
「……ママと琴音の二人っきりの生活だったのにね」
「ママ……」
──気づいてたんだ。
私は、初めてそれを知る。
隠してたつもりだったけど、ママは全部わかってたんだと。
「……わかるわよ。何年一緒に暮らしてると思ってるの」
私の頭の中を覗いたかのような、笑い混じりの言葉。
じわじわと、こみ上げてくるもの。
「琴音、普通にしようって頑張ってくれてたよね。
お父さんにも、葉月くんにも、話しかけられるとちゃんも笑顔で丁寧に答えてて」
「…………」
「ママ、いつも以上に気をつけて琴音を見てたから、すぐわかった。
……琴音が時々寂しそうな顔してるの」
「……だって────」
「ん?」
「だってこれからはもう私だけのママじゃなくなるんだから、って……そう自分に言い聞かせたりしてたから……」
「……そうね」
ママが、深く息を吐く。

