この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
宵闇
第20章 条件

そしてまた訪れた静けさを終わらせるように鳴った、ドアホンの音。
「葉月くんかしらね」
新しくいれたコーヒーを飲みながらママは言い、私はその言葉に玄関へと急いだ。
ドアを開けると、そこにいたのはやっぱり葉月くん。
中に入って来るなり、琴音、と私をぎゅっと抱き締めてくれた。
「……泣いたの?」
そして私の顔を覗き込みながら、口にする。
「少しだけ。でも大丈夫」
私の言葉に葉月くんは少し微笑み、頭を撫でてくれた。
「──雪乃さん、中だよね?」
頷く私を確認すると、靴を脱いで中へとあがり、LDKの入り口で足を止める。
「雪乃さん」
ママが、私たちを見た。
「……早かったわね。
早速だけど座ってくれる?」
「はい」
キッチンに置いてあった折り畳み椅子をテーブルへと運び、葉月くんとふたり並んで、ママと向かい合うようにして座った。
ママが私たちを交互に見て。
それから、静かに話し出した。
「……初めて葉月くんに会ったとき、利発そうな男の子だと思ったわ」
その口もとに浮かんでる、微かな笑み。
「今時の高校生にしては言葉遣いもきれいだなあって」
前に葉月くんから聞いたことを私は思い出していた。
お父さんの担当教科が国語だからか、葉月くんが幼い頃から言葉遣いにはとても厳しかったのだと。

