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宵闇
第20章 条件


「──あ」


ふと、それを思い出した私は


「そういえばさっきお父さん、ママに何て言ってたの?」


そう、口にした。


お父さんがここに入ってきたとき。
ママに何か話して、そのあとのママの顔が、不満そうな、でも嬉しそうな、そんな不思議なことになってたから。


それを説明すると、お父さんはすぐに答えてくれた。


「亡くなった琴音のお父さんと、葉月のお母さんのことを話してたんだよ」

「え? パパたちの?」

「そう──あの二人が、葉月と琴音を出会わせるために私たちを出会わせたのかもしれないなあ、ってね」

「失礼しちゃうでしょう?」


ママが口を挟む。


「私たちが琴音たちのために出会ったなんて、ねえ?」


そう言いながら、また不満そうにお父さんを見る。
ははっと笑いながら、お父さんは優しい目でママの視線を受け止めていた。
その表情に、ママもすぐに笑顔へと戻る。


……ママは続けた。


「でも本当にそうだったら……二人とも、きっと今頃喜んでるわよね────」


……ママとパパが出会って、私が産まれて。

お父さんと葉月くんのお母さんが出会って、葉月くんが産まれて。

ママとお父さんが出会って、そして──私と葉月くんが出会った。


「……なんか不思議だね」


思わず呟く。


偶然に違いないのに、最初からそう決められていたかのような気もしたりする。

葉月くんと一緒になることを。
ふたりでこれからずっと一緒に生きていくことを。


「……幸せになろうね」


私の耳元で、そっと葉月くんが囁く。


たぶんそれはママたちには聞こえてなくて。
そんなこそこそした感じがなんだかくすぐったくて。


私は笑って、うん、と頷いた────。






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