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宵闇
第21章 月影
次第に呼吸が落ち着いてきた私は横たわったままで葉月くんを見つめた。
「……うそつき」
使用後のそれの処理をしていた彼に向かってぼそっと呟くと、え? と私に向き直る。
「優しくするって言ったのに」
そう続け、ぷいっと顔を背けた。
「え……優しくなかった?」
心外だな、といった様子で。
でも楽しそうに笑いを含んだ口調で。
「ねえ」
琴音、と私を呼ぶ葉月くんの手が身体に触れてくる。
「……こっち向いてよ琴音ちゃん」
「っ────」
どくん、と心臓が跳ねた。
だって突然私を『ちゃん』付けで呼ぶから。
「……もう! 葉月くんやっぱり意地悪!」
視線を戻し、彼を睨む。
「意地悪? 嫌い?」
その視線を受け止めながらも穏やかな笑顔を崩さない葉月くん。
私の頬をさらりと撫でてくる。
「ねえ? ……嫌い?」
繰り返し尋ねてくる声は、優しく、甘い────。
「……もうやだ……!」
「え?」
「葉月くんなんかもういやっ……!」
自分でも何を言っているのか、何を言いたいのかわからなくなってきた。
顔を両手で覆ってじたばたとしてしまう。
え、と葉月くんの、笑いを含みながらも戸惑っているような声が聞こえた。
「なに琴音……可愛いんだけど!」
ははっ、とその笑いが大きくなる。
次の瞬間、私の身体は彼に抱き締められた。