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宵闇
第6章 揺れる
翌日────。
「……何かあった?」
加奈が、私の顔をまじまじと覗きこみ、ぽつりと口にした。
「少し目が腫れてる。もしかして昨日泣いた?」
「……やだ、やっぱりわかる?」
はは、と苦笑いする私を心配そうに見る。
「何があったの?」
「……ん。ちょっと、ね」
──あんなことさすがに加奈にも言えない。
そうやって濁して答えることしかできなかった。
「先輩とケンカした?」
ケンカ、か──だったらまだよかったけど。
「……そんなとこ」
でも、そう思ってくれてた方がきっといい。
「そっかあ……何あったのか気になるけど、私からは無理には聞かないね。
でも琴音が言いたくなったときはいつでも聞くから!」
「ん……」
ありがと、加奈──と続けようとしたときに感じた視線。
顔を向けると、こっちを見ていたらしい村上くんと目が合い、咄嗟に俯いてしまった。
「……村上も心配してたよ」
そんな私に加奈が、そう口を開く。
「琴音と会う前に先に村上に会ったんだけど、琴音の様子が何か変、って教えてくれた」
「……そうなんだ」
村上くん────。
こんな私をそんなふうに気にしてくれるなんて、と……何だか申し訳ないような気持ちにもなり、私は俯いた顔をしばらく上げることができないでいた。