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宵闇
第6章 揺れる


沈黙はどれくらい続いたのだろう──いつのまにか、私は抱き締められていた。


「……悪い。言い過ぎた」


耳元で囁かれた言葉は、さっきまでとは違って優しい。
ぎゅっ、と腕に力が込められ、少し苦しいぐらいになる。


「好きなんだよ……琴音が」


溜め息のように口にされた告白に、先輩……と無意識のうちに私は呟いていた。


「琴音がどこにもいかないようにしたかった。
無理矢理にでも俺のものにしたかった」


もう一度、溜め息が深く。


……やっぱり、どうしても私にはわからない。
先輩がどうしてそう思ってしまうのか。
私は先輩以外見ていないのに……なのにいったいどこにいくっていうんだろう。


「俺……別れねーからな」


きっぱりと口にされ、離された身体。
涙がまだおさまらない私は泣き顔のまま先輩を見上げる。
私と視線を合わせた先輩は、一瞬その顔を苦しそうに歪め……そしてそのまま私に口づけてきた。
まるで噛みつくかのような──苛立ちをぶつけるかのような、そんな激しさ。

どうしたらいいかわからない私は、私の両肩を掴んでいる先輩の腕を縋るように掴んだ。
その激情がおさまるまで、ひたすら先輩に応える。


「っ、はあ……っ」


やがて離れた先輩と私の唇。
互いの荒い息が漏れる。


「……俺のこと、好き?」


そして先輩がまた私の気持ちを問い、すぐに頷いて答えた私を再び抱きしめる。


……私の今までの態度が先輩を不安にさせたというのなら、私はもっとちゃんとしなくちゃいけない。
どんな態度ならいいのかなんて正直よくわからないけど、でも、ちゃんと。そう、ちゃんとしなくちゃ────。


そう思いながら、私は先輩の背中にそっと腕を回した。
先輩はさらに強く私を抱く腕に力を込める。
琴音、と囁いてくる声はやっぱりどこか苦しそうで……思わず私まで、そんな気持ちになった。




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