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宵闇
第9章 溶ける
「どうしよう……」
久しぶりに会う友達とのごはん。
お酒も入り、カラオケで楽しくはしゃいでるうちに時間を忘れてしまった。
気づいたときには終電の出る時間になっていて──慌てて店を出たけど案の定間に合わず、途方にくれていた。
今日はそのまま彼氏の家に泊まりに行く予定だと言っていた友達に、あらためて連絡するのも気が引ける。
「……葉月くん、いるかなあ」
葉月くんのアパートは、今いる場所から近くて、歩いても行ける。
こんな夜中に突然で申し訳ないけど、一晩泊めてもらえないかな──無理だったらネットカフェででも過ごそう、とだめもとで電話する。
葉月くんはすぐに出た。
『琴音ちゃん? どうしたの?』
私が話しかける前に、そう聞いてくる。
「うん、あの……夜遅くごめんね……!」
『起きてたし大丈夫だよ。どうしたの?』
「実はね、こっちに出てきてるんだけど、遊んでたら終電逃しちゃって……。
今いるとこ葉月くんのアパートに近いから、今日泊めてもらえないかなあと思って」
『もちろんいいよ? おいで』
即答に安堵の息が漏れた。
「よかったー! ありがと葉月くん!」
『あ、迎え行くから。いまいる場所教えて?』
「え!? 大丈夫だよ! 場所わかるし自分で行けるから────」
『だーめ。女の子が夜中にひとり歩きなんて危ないでしょ?』
……もう。葉月くんはいつも優しいんだから、と顔が勝手に笑ってしまった。
結局、迎えに来てもらうことになり、明るいところで葉月くんを待つ。
その間、加奈にも電話して事情を話しておいた。