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宵闇
第9章 溶ける
「……僕の前では無理して明るくしなくていいって」
そんなふうに言われ、葉月くんは何でもお見通しなんだな、って変なところで感心してしまう。
「そのこと引きずってるから次の彼氏作る気にもなれないんじゃない?」
思わず葉月くんを見ると
「──もうそろそろ全部話してよ、琴音ちゃん」
そう言って私に視線を合わせてくる。
真っ直ぐに見つめてくる。
「琴音ちゃんってさ……愚痴とかあまり言わないでしょ?
自分のそういう気分に人を付き合わせるの苦手なんだろうけど、僕にまで気を遣わなくてもいいんじゃない?」
ね? と目が優しく曲線を描く。
「……葉月くんって、私以上に私のことが詳しい気がする……」
つられたように、ふふ、と勝手に笑みが零れた。
「そうだね……じゃあ聞いてもらおうかなあ」
誰にも話してなかったこと。
加奈にさえ、言ってないこと。
葉月くんの柔らかい眼差しがそうさせるのか、心の中だけにしまいこんでいた出来事を──言葉を解放させるために開いた私の唇。
「……最初はね、よかったの」
「うん」
葉月くんは、私が話しやすいようになのか、私の正面じゃなくて横に座った。
「告白されて付き合ったんだけど、だんだん、私も先輩のことが好きだな、って思うようになっていって」
「うん」
葉月くんの静かな相づちが嬉しい。
私は、少しお酒も入っていたこともあってか、このまますべてを話してしまえそうな気がした。