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黒椿人形館
第2章 芳香
 真菜の腰は、自身の意識から離れ、理性を持たない別の生き物のように悩ましげに前後左右にくねって止まらない。
 声を我慢するが、やはりそれでも出そうになる。
 「ああぁぁっ……ああっ……はあんっ……!」
 我慢し切れずもう一度嬌声を上げた時、真菜は自分の声が二重に聞こえた。
 ――えっ……?
 押し寄せる快楽の波に蹂躙されて理性が麻痺しつつあるせいなのだろうか。
 ――違う。
 「……ぁぁぁ……ぁぁっ……」
 ――しの……ちゃん……!
 聞こえていたのはしのめの声だった。
 場所は分からないが、遠くはない。鉄格子だけで木製の扉は開けられたままの、部屋の入口を通して聞こえてくる。
 しのめの喘ぎ声とともに、鞭が皮膚を打ち付ける音も聞こえる――また、真紅の鞭による快楽の海に溺れさせられているのか。
 もしかしてしのめは――全裸のまま床に四つん這いにさせられて、膣の穴も尻の穴も真上を向くくらいに尻を突き上げさせられたまま、身動きひとつできないようきつく緊縛され、紅いバスローブの男に何度も何度も――雪のように白い尻を真っ赤な鞭で打たれ、時には股間に開く花弁をも打たれ、そこからピュッ……ピュッ……と生温かい汁を飛ばし、昇り詰めさせられているのだろうか。
 そんな想像をしている真菜の腰の動きは、一層速くなり、さらに自身のクリトリスに刺激を与え、全身を駆け抜ける痺れに喘ぎ声を上げる。
 「……あんっ……あはっ……」
 ――やめて……
 ――あたしの大事なしのちゃんの身体に……
 ――気安く触らないで……!
 聞こえてくるしのめの声がさらに大きくなってくる。
 「……ぁぁぁぁあ……ひいいいいっ!! ……ひぐっ……!!」
 それに合わせて鞭の音も大きくなる。
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