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黒椿人形館
第3章 所有者
 それよりも――
 どんどん沸き上がってくる羞恥心と屈辱で、真菜は全身が火を噴いたように熱くなった。
 真菜は思わず脚を閉じた。
 すると男は、真菜の頭に乗せていた足をどけて真菜の尻を一発、強く平手打ちした。
 「痛いぃっ……!!」
 「動いてはいけないと言ったはずだよ?」
 男はそう言いながら、真菜の脚を開いて姿勢を戻させた。そしてソファに座り直すと、再び真菜の顔を踏みつけた。
 ――この男が……
 ――しのちゃんを……
 ――あたし……
 ――どんな目に遭わされるの……?
 部屋は相当、広い。壁は燭台がなく、どうも天井に大きなシャンデリア型の照明があるようだ。それともう一つ、これまで見た部屋などと決定的に違うことがあった。
 それは、どの壁も一面にびっしりと黒い椿がデザインとして描かれているのだ。
 よく見ると、男の座っているソファも全面に黒い椿が描かれている。
 黒い壁、黒いソファと、真紅の絨毯、真紅のバスローブとが強烈なコントラストを放っている。
 真菜は、鏡を通して男と目が合った。
 男はほほ笑みながら言った。
 「ああ、服? 濡れてたからね……礼はいい。着せ替えるのは僕の楽しみだから」
 『着せ替える』という表現がなんとなく気味悪い。むろん礼など言うつもりはないが、真菜は男の『濡れてた』という言葉を聞いて、意識を失う前のことを思い出した。
 この男に――鞭打たれているしのめを想像して――叫び声のようなしのめの『喘ぎ声』を聞きながらオナニーにふけったのだ。
 ――意識失うくらい感じちゃうなんて……
 しのめの声に、我を忘れるほど快楽を貪ったのは他でもない、自分自身だ。
 真菜の脳裏を罪悪感のようなものが一瞬よぎった。
 それにしても――どれくらい濡れているんだろう?
 むき出しの股間に触れる空気の冷たさから考えると、花弁や肉芽は相当な濡れ方のようだ。太ももまでも濡れてる感触がある。しかも、その滴りを拭うことなくそのままにされて――そう思うと、真菜は与え続けられている羞恥心という火にさらに油を注がれたような感覚になった。
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