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黒椿人形館
第3章 所有者

(3)

 しばらくして、ようやく真菜は呼吸できるようになってきた。
 下腹部から脇腹にかけてが痛い。
 どうも一瞬で、ものすごい力で男に蹴飛ばされたようだ。
 男がしゃがんで首輪のリードを引っ張り、真菜の顔を上げさせて覗き込んできた。
 さっきまでのほほ笑みは顔から一切消えている。
 その切れ長の目には、殺気さえまとっているように見えた。
 真菜は――
 震えた。
 男は真菜を軽々抱き上げ、さっき居た鏡の前まで運んでくると真菜を再び四つん這いにさせた。脚を思い切り開かされ、陰唇もアナルもむき出しにさせられる。スカートが落ちてきて真菜の尻を包んだので、男はそれをまくり上げ尻を丸出しにした。
 ――ちゃんと……
 ――四つん這いにならないと……
 ――きっと、また……
 ――蹴飛ばされる。
 真菜は、力の入らない脚の形を必死に保とうとした。
 小刻みに太ももが震える。
 「悪くはないね……震えることで引き出される太ももの質感……いや、肉感かな。しのめにそれをやらせると、それはもうたまらない光景なんだ」
 また、しのめと比較された。
 男は、さっきまでのほほ笑みに戻っている。その目に殺気はもうない。
 真菜は、尻をむき出しにさせられ、秘部をさらされてる恥ずかしさは依然感じていた。しかしそれよりも、ただこの男を怒らせてはいけない、という気持ちの方がはるかに大きかった。
 男は真菜の下尻からニーソックスの間までの左足の太ももを何度も舌先でなぞった。
 また、真菜の全身を不気味な感触が駆け上がっていく。
 その時、真菜は尻に、弾けるような強烈な痛みを感じた。
 「あがぁあっ……!!」
 鏡を見る。
 男がバラ鞭を手にして、真菜の真後ろから彼女の尻を何度も打ち始めたのだ。
 あの――しのめの尻を打っていた真紅のバラ鞭だ。
 「んぐっ……!! があっ……!! んあ……ああっ……!!」
 鞭が真菜の尻を襲うたびに、無意識に痛みから逃げるために尻を引っ込めようと腰が動いてバランスを崩し、倒れそうになる。
 倒れるわけにはいかない。
 また――
 この男にどんな目に遭わされるか分かったものではない。
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