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黒椿人形館
第3章 所有者
 真菜は、鞭の痛みに耐え、必死に四つん這いの姿勢を保った。
 打たれるたびに、尻から全身に向かって苦痛の電流が隅々まで波紋のように駆け抜けていく。
 ――痛い……!
 その言葉しか頭に浮かんでこない。
 けど――。
 しのめは。
 この男に鞭打たれて、明らかに『感じて』いた。
 この男にかかれば、そんな身体に造り変えられてしまうのだろうか――。
 男はさらに強く真菜の尻を鞭打った。
 「ぎゃあああぁぁあっ!!」
 ――だめ……
 ――崩れそう……
 この痛みをこのまま与え続けられるようだと、とても姿勢を保てそうにない。
 あまりの痛さに、思わず真菜は小便をピュルッ、ピュルッ、と少し漏らしてしまった。
 見えていないはずはないのに、男は真菜の失禁など全く興味がないようだ。それを口で指摘されるより、分かっていながら無視されたことの方がなぜか真菜は余計に恥ずかしかった。
 再び、鞭打ち。
 「ひぎいぃぃぃいいっ……!!」
 その時――。
 真菜はふと思った。
 今、自分の尻に直接触れている真紅のバラ鞭――。
 さっきまで、しのめの尻を打っていたのだ。
 ――しのちゃんのお尻に触れた鞭……
 ――その鞭が……
 ――あたしのお尻に触れてるんだ……
 真菜は、バラ鞭を通じて、自分の尻がしのめの尻に触れているような感覚が芽生えてきた。
 そう考えると真菜は――
 男の鞭に何とか耐えられるようになってきた。
 「しの……ちゃん……!」
 真菜は、ほとんど声になるようなならないような大きさでしのめの名前を呼んだ。
 鞭の痛みの中に――小さな小さな『甘み』を必死で探しながら――。
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