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黒椿人形館
第4章 壁
 「しのちゃん、あたしは自分壊したいなんて思ってないよ……どうしてあたしを巻き込んだの?」
 しのめは真菜から目をそらせ、何も答えない。
 「……あの男に……しのちゃんと比べられて、何度も何度もあたしの身体が不細工だってけなされてるんだよ?」
 「……そう」
 「嘘でもいいから他に言ってくれることないの……?」
 「なぐさめて欲しいの?」
 しのめの言葉が真菜の胸に突き刺さる。
 しばらく沈黙が流れた。
 やがて真菜が口を開いた。
 「……しのちゃん、一緒に逃げよ……?」
 「……逃げてどうするの?」
 「……思い切りしのちゃん抱きしめたい」
 「それから?」
 「それから……」
 「マナが私の人生からも逃がしてくれるの?」
 「それは……」
 「マナはね……頼るのが上手なの。人に好かれるのが上手。世話を焼きたくなっちゃう……でもそれは、マナはいつも誰かに頼ってないとすごく不安になる子だから。自分を守るために身に付けた生きる術……」
 「あたし、そんな器用じゃ……」
 「褒めてないよ。マナは人に頼ることしかできない」
 「……」
 「マナは私に頼りたいだけなんじゃないの?」
 「……」
 「私じゃなくてもいいんじゃないの?」
 「そんなことない! しのちゃんは大事な……」
 「『親友』だから、よね」
 しのめのその言葉は、なぜか真菜の心を鋭く貫いた。
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