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黒椿人形館
第4章 壁
 ――しのちゃんを頼りたい存在としてしか見てないのかも、知れない……
 ――それは本当の友達?
 ――それは本当の親友?
 ――頼れるなら誰だって……
 「違う! 違う違う違う!!」真菜は何度も首を横に振りながら言った。
 「しのちゃん!! 本当にこれでいいの!? ねえ!! 本当に今のままでいいの!?」
 「話そらしちゃダメだよ。マナは誰かに頼りたいだけ」
 「違う!!」
 「逃げるなら一人で行って」
 その時突然、しのめは慌てて起き上がり急いで穴を板で塞いだ。そして何かが板に当たる音がした。
 「待ってしのちゃん!!」
 真菜も慌てて穴に手を入れ、しのめが塞いだ板を押そうとした。
 その時。
 あの男の声がした。
 しのめの部屋にあの男が来たために、しのめは急いで話を終わらせて板を置いたのだ。
 穴が塞がったのと、声が大きくないのとで、男が何を言ってるのかは分からない。
 「申し訳ございません!! 申し訳ございません!!」
 しのめが必死に謝る大声だけがはっきり聞こえてくる。
 ――やめて! しのちゃんにひどいことしないで……!
 しのめが何度も何度も謝る声と一緒に、何やらガタガタ物音がしばらくしていたかと思うと、突然一切の物音が聞こえなくなった。
 一体、何が起こったのか――
 真菜は、そっと穴に手を入れて向こう側の板をゆっくり押した。
 重し代わりに何か置かれたのか、びくともしない。
 ――こっちにも来るかもしれない……!
 真菜は入口の方を見た。扉も鉄格子も閉まったままだ。
 真菜は穴に板をあてがい、釘穴に最初に刺さっていた釘を挿した。ぐらぐらするが、そっとしておけば外れることはなさそうだ。急いでベッドの位置を元に戻す。
 真菜はベッドの上で、横になりひざを抱えて丸くなった。
 体が勝手に震え、止まらない。
 結局、男は真菜の部屋に来ることはなかった。
 しかし、隣の部屋からしのめの声が聞こえることも、二度となかった。
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