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黒椿人形館
第5章 人形
(2)
それ以来、真菜は孤独によって強烈な不安に襲われるたびにオナニーした。
そうやって自分の“生”と、まともな神経で居られていることを確かめた。
しかしある日突然――
バスローブの男が現れた。
思わず、真菜の顔から笑みがこぼれた――
が、逆にいつもほほ笑みをたたえていた男の顔に一切笑みはなかった。
顔だけではない。男の様子そのものが、何となく以前と異なる。
真菜はバスローブの男に、久しぶりに黒椿の部屋へ連れてこられた。
しかし――衣装を着せられることはなかった。
代わりに全裸に首輪のままで、胴体をきつく縄で亀甲縛りされ、両手は後ろ手に縛られ、脚は閉じることも曲げることもできないように緊縛され、真紅の絨毯の上に転がされた。全身をまっすぐ伸ばした形で一切どこも動かせない状態にされたのだ。
もしかして、壁の穴のことで、拷問のような折檻でも受けるのだろうか。
だとしてもなぜ今なのか。
いつもの場所に置いてある大鏡に、真菜の姿と男が映っている。鏡の中の男は手にしている真っ赤な蝋燭にライターで火を点けた。
男が蝋燭を持ち出すのも、初めてのことだった。
真菜の中に、怖さが芽生えた。
それでも――
真菜は、怖さの中に、孤独でないことの『喜び』があることに気づいた。
男は蝋燭を傾け、うつ伏せになっている真菜のむき出しの尻に一滴、熱蝋を垂らした。
「熱いぃぃぃっ……!!」
思わず尻の肉が引っ込むように締まる。立て続けに真菜の尻に熱蝋がポタポタポタ……と垂らされていく。
「あぁぁぁああっ……!! ついぃぃぃっっっ!!」
真菜は熱蝋から逃げるように、全身をよじりながら絨毯の上を這いずり回る。
その姿は、さながら芋虫のようだった。