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黒椿人形館
第5章 人形
 「……濡らしても……はあんっ……濡らしても、あたしの身体はキレイに……なりませんよね……」
 「マナ、僕はね、これまで君の部分部分の曲線については批判したが、君自体を批判したことは一度もないはずだ」
 「……はい……」
 ――え……?
 ――えっ……?
 ――あたしの名前を、呼んだ……?
 ――あたしの言葉に、応えた……?
 「マナ、大事なのは、顔や身体の個々のパーツの良し悪しじゃあない」
 ――やっぱり……
 ――あたしと会話してる……
 「人形にとって一番大事なのは、ひとつひとつのパーツ全てが『合わさった結果出来上がるバランス』、それによって全体からにじみ出る空気感とオーラだ……例えば顔でも、目というパーツだけを大きく見せようと必死に周りを黒く化粧するなんてのは、愚の骨頂だ」
 男は、真菜の花弁の中をゆっくりとかき混ぜながら続ける。
 「マナ、君が持っているのは、君が今の全体のバランスから放っているのは、誰にも出せない『包みたくなる愛らしさ』だ」
 ――この人が……
 ――あたしを褒めてる……?
 ――『愛らしさ』……?
 「……でも……あたしに愛らしさなんてものがあったとしても……それを都合よく利用してるだけです……」
 「ほう。何のために?」
 「……誰かに頼ることしか……できなくて」
 「それの何がだめなんだ?」
 「……え?」
 真菜は首を後ろに向け、呆然とした顔で男を見た。
 そして男が一呼吸置いて、言った。
 「全て、今のままでいいんだよ」
 その時、真菜の心のひだが震え、その振動が首筋から背筋を駆け降りていった。
 同時に、男の指が中からクリトリスの裏側をえぐった刺激が膣内を駆け上がっていった。
 二つの感触は、真菜の腹の奥底にあるメスの芯を同時に襲った。
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