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黒椿人形館
第6章 乱舞
(2)
部屋に入ってきたしのめの手には鍵の束が握られている。
真菜は、自分でどれくらいの速さでどう動いたのか覚えていないが、気がついたらしのめに飛びかかり力一杯抱きしめていた。
そして、真菜は号泣した。
「しのちゃん……!! 無事だったんだ……!!」
真菜としのめは、そのまま貪るように唇を重ね、お互いの舌を激しく絡ませた。
真菜はしのめの首筋に鼻をつけ、号泣で垂れてきた鼻水を全部すすりながら嗅いだ。そして鎖骨、乳房、乳首へと移り必死に必死にしのめの体臭を吸った。
しのめは真菜の右手を握り、人差し指から中指、薬指、小指へと愛おしそうに真菜の感触を舌に刻みこむようにしゃぶった。
真菜もしのめも昂り、息が荒くなっている。
しかし、しのめはそこで真菜の身体を離して言った。
「……マナ、こうしていたいけど時間がないの。行くよ?」
「ど、どこへ?」真菜は食事が置かれる台に掛けてあったタオルで鼻をかんで言った。
「逃げる以外何があるの?」
しのめは真菜の手をしっかりつかんで部屋を出ようとした。
「しのちゃん待って!」
真菜は足を踏ん張ってしのめをとどめた。
「どうして……? あの時はあたしに一人で逃げろって言ったのに?」
「マナ一人で逃げられるの?」
しのめは真菜の手を引っ張り、強引に部屋から連れ出して廊下を走り出した。
「ちょ……っと、待って、しのちゃん……!」
突然のことで真菜の頭は混乱していたが、しのめと共に必死に走った。
ずいぶん走った気もするし、ほんの少ししか走っていない気もする。
どこをどう走ってきたか分からないが、二人はひとつの木製扉の前までたどり着いた。
しのめは手にしていた鍵の束を素早く一つ一つ見ていって、ある鍵を手にして扉の鍵穴に挿した。この扉も、内側から鍵を掛けるようになっている。