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黒椿人形館
第1章 黒椿館
(3)
真菜は一瞬何が起こったのか理解できなかった。
大勢の『しのめ』という異様な光景の中にとどまっていたあまり、幻覚でも見たのではないかと思った。
しかし、目が合った『しのめ』は声を出しており、身体は動いており、真菜が直にその肩に触れて体温を感じ取るにいたり、それが本物のしのめであることをようやく飲み込めた。
真菜は必死になってしのめの猿轡の縄を解こうとしたが、結び目が固く思うようにほどけない。
何とか猿轡を外すことができた真菜は、しのめの全身を締め付けている縄も急いでほどいていく。
その間、しのめは切なげに喘ぎ声を上げ続けている。
「……は……あっ……あは……ん……」
真菜が全部の縄をほどき終わると、しのめの股間から伸びているコードに目をやった。
それが何かは――想像はなんとなくついた。
真菜は一瞬ためらったのち、コードを引き抜いた。
「うあんっ……!」
しのめは一層悩ましげな声をあげた。
コードの先端に付いている丸いローターが絨毯の上に転げ落ちる。
ローターは、蝋燭の赤い光と絨毯の紅さで真紅にテラテラと濡れて、振動したまま光を揺らしている。
それが――おそらく――しのめの膣に入れられていたと思うと……そしてこの紅い光を発散させている液体がしのめの『花弁の中の液』だと思うと……こんな状況であるにもかかわらず、思わず真菜はその真紅の輝きに見入ってしまった。
再び、真菜の下腹部の奥の芯を、何かがつまみ、淡い痺れが背筋を駆け上っていく。
真菜は自分の両頬を両手の手のひらで強めに三回叩くと、着ていたハーフダッフルコートを急いで脱いでしのめの上半身にかけた。その時、真菜の指先が偶然しのめの乳房の下の方に触れた。
それは思わず息を飲むほど――
柔らかかった。
ほんの一瞬だったが、指先が吸い取られるかのような蕩けそうな『甘さ』――そう、『甘さ』としか表現のしようがない手ざわり。
自分も同じ身体を持っているはずなのに、しのめの、普段人に触れられはしないであろう場所の感触は、踏み込んではいけない神聖な場所を侵した時に味わうような罪悪感と、それと引き換えに得られる甘美な誘惑を真菜に与えた。
――もっと……
――さわりたい……
――コートなんかかけずに……
――連れ出したら……
――ずっとしのちゃんの身体に触れたまま……