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黒椿人形館
第1章 黒椿館
真菜は自分の動きが止まっていることにまた気付いた。今度は頬は叩かなかった。
代わりに頭を左右に何度か振った。
――もう! とにかく逃げなきゃ……!
真菜は気を取り直すと、ハーフコートの前ボタンを手早くしめた。しかし、丈の長さはしのめの下半身を完全に隠すには足りず、少しだけ彼女の下尻が出ている状態だ。
真菜は着ていたのがロングコートでないことを悔やんだが致し方ない。
「……マ……ナ」
しのめが力なく声を出した。
「しのちゃん大丈夫……!? しのちゃん……!?」
真菜はしのめの左腕を自分の肩にかけて支えた。しのめは足を小刻みに震えさせ、頬を紅潮させたまま、真菜がこれまで見たことのない蕩けるような瞳をしていた。
真菜は一瞬その瞳にどきっとした。
が――、とにかくここから連れ出して逃げなければならない。完全に身体を隠せない状態で洋館から連れ出すのはもちろんはばかれるが、それでも最優先はここから逃げることだ。
真菜はしのめを支えながら、入ってきた両開き扉の方へ引き返そうとした。
「……だめ……あっちは、中からは出られない……」
しのめはそう言うと、二人の目の前にある扉を指さした。真菜はしのめを支えて歩きながら、その扉を開けて向こう側へと抜けた。
そこは長い廊下だった。ここも壁には燭台の蝋燭に火が灯されており、同じく真紅の絨毯が敷かれている。廊下は左右両方に伸びており、どちらもいくつか壁に扉があり、突き当たりは通路が同じ方向へと直角に曲がっている。
真菜はしのめが指さした方向へ廊下を歩き出す。
なるべく、速く、速く――。
代わりに頭を左右に何度か振った。
――もう! とにかく逃げなきゃ……!
真菜は気を取り直すと、ハーフコートの前ボタンを手早くしめた。しかし、丈の長さはしのめの下半身を完全に隠すには足りず、少しだけ彼女の下尻が出ている状態だ。
真菜は着ていたのがロングコートでないことを悔やんだが致し方ない。
「……マ……ナ」
しのめが力なく声を出した。
「しのちゃん大丈夫……!? しのちゃん……!?」
真菜はしのめの左腕を自分の肩にかけて支えた。しのめは足を小刻みに震えさせ、頬を紅潮させたまま、真菜がこれまで見たことのない蕩けるような瞳をしていた。
真菜は一瞬その瞳にどきっとした。
が――、とにかくここから連れ出して逃げなければならない。完全に身体を隠せない状態で洋館から連れ出すのはもちろんはばかれるが、それでも最優先はここから逃げることだ。
真菜はしのめを支えながら、入ってきた両開き扉の方へ引き返そうとした。
「……だめ……あっちは、中からは出られない……」
しのめはそう言うと、二人の目の前にある扉を指さした。真菜はしのめを支えて歩きながら、その扉を開けて向こう側へと抜けた。
そこは長い廊下だった。ここも壁には燭台の蝋燭に火が灯されており、同じく真紅の絨毯が敷かれている。廊下は左右両方に伸びており、どちらもいくつか壁に扉があり、突き当たりは通路が同じ方向へと直角に曲がっている。
真菜はしのめが指さした方向へ廊下を歩き出す。
なるべく、速く、速く――。