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黒椿人形館
第1章 黒椿館
 二つ目か三つ目の扉あたりで、しのめの足が止まった。
 「ここ!?」
 急かすような真菜の問いにしのめがうなずく。
 歴史を感じさせる頑丈そうな木製の扉だ。この洋館の扉は全てこんな感じなのか。
 急いで真菜はドアノブに手をかけ、扉を開く。
 が、扉の向こうは六畳ほどのただの部屋だった。
 燭台の蝋燭と紅い絨毯があるのは廊下と同じだ。
 「……しのちゃん、ここは……」真菜は、突然後ろ手にされてほぼ同時に両手首と両足首に手錠をかけられ、背中を思い切り突き飛ばされた。
 気が付けば真菜は絨毯に突っ伏していた。
 毛の長いふさふさの絨毯とはいえ、不意にうつ伏せに倒されるとやはり痛い。
 その時、やたら重みのある大きな金属の音が鳴り響いた。
 倒れたまま、真菜は上半身をよじって起こし、入口の方を見る。
 またもや真菜は自分の目を疑った。
 入口が頑丈な鉄格子の扉で閉められたのだ。
 よく見ると、廊下側にある木製の扉と、内側にある鉄製の格子扉の二重扉になっている。
 そして――
 鉄格子を閉めているのは――
 しのめだった。
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