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キスの花束を
第6章 待ち伏せと不機嫌
エレガントだけど可愛いデザインのワンピースに
それに似合うハイヒールを合わせた。

「誕生日プレゼントだよ」

昨日の女子会でのクダを巻いた明日香はどこへやら
朝からふんわりな女の子に戻っていた。

「え?」
「私から。ダイエットが成功するころ
紗江子ちゃんの誕生日だなって。ずっと思ってたの」
「明日香」
「とっても綺麗。凄く素敵。
紗江子ちゃんは私と違って背が高いからハイヒールがよく似合う」
「明日香」

「司君の学校は今日は土曜日だから午前授業だよ。
1時半から部活だって。その合間に学校近くの牛丼屋でお昼を食べることは
リサーチ済。今から行けば校門で捕まえられるよ。行っておいで」

企画部の明日香らしい、綿密な計画。
「そのワンピースで悩殺しちゃえ!」

明日香はグッと親指を立ててウインクした。

「ありがと」

そう言うと、私は改札口に向かって歩き出した。


でも。
本当にいい考えに思えたその計画は
ものすごい恥ずかしい計画だってことに気付いたのは
校門に着いてからだった。

もちろんツカサのクラスが「何時何分に終わるか」なんか知らなくて。
もちろん部外者の私が学校に入って行くわけにいかなくて
ひたすら校門近くで待ち伏せした。

少し離れた所から見ようと思ったけど
万が一、すれ違ってしまったら
せっかくの明日香の気持ちが台無しになっちゃうと思って
校門前を動けなかった。

女子も男子も、私を必ず一目見てから
通り過ぎて行く。

そりゃそーだよね。
他校の女の子ならいざ知らず。
どう見ても高校生にしたらオバさんの私が
校門で誰かをじっと待っているなんて。
逆エンコーかっっ。

保護者や家族なら本人に直接連絡取るだろうし
学校にも入っていけるはず。

こんなところにいる大人は私ぐらいなもんだ。

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