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一夜の愛、人との愛
第13章 金の拘束
身動き取れずに地下で息を潜める2人をよそに、建物の周りを黒いヴェールが覆い隠した。
漆黒の闇に包まれたエデンで、天使の住まう建物だけが、幻想的に柔らかく光っている。
その美しい輝きをよそに、草花の陰の生き物や、木立に身を寄せる小動物達は皆、深い眠りに落ちていた。



そして、真理亜の身体に、ゆっくりと白い館のエッセンスが染み込み始める。



(あれ…)

膝を抱えた状態で、真理亜は額に浮かんだ汗に気付き、そっと顔を上げた。
闇に慣れた瞳が、薄暗い地下牢の中、左奥に座り込み俯いたまま動かないザレムの影を捉える。
他には何もいないし、耳に入ってくるのは、自分の吐息の薄い音だけだ。

安全と言われたはずの場所で、訳もなくしっとりと濡れる自分の額に、右手を伸ばして、真理亜は身体を小さく震わせた。

「……」

唖然として手を離し、素早く自分の右手を見つめるが、その指先には何もついていない。

(……え)

額に触れた瞬間に、痺れるような感覚が身体を走った。
思わず、指を離してしまうほどの、奇妙な触覚だった。

どうして、身体が火照っているのだろう。
なぜ、呼吸が早くなっている気がするのだろう。

(気のせい、だよね…)

そう思う傍から、肌に触れている布地が、熱く纏わりついてきて、何かが素肌を撫でているような、妙な震えが走りだす。
丸めた背中に走る2本の裂け目から、素肌が空気に触れる、その感覚さえ、ぞくりと響く。

ふわふわと熱に浮かされたような感覚が、時折衣擦れの度に、鮮烈な印象を生み出して、徐々に追い詰められていく、そんな錯覚に襲われる。

(熱が…)

上がっている。
身体の奥から、じわりと滲むような熱が、少しずつ、体温を上げてくる。
腰の中心を熱い掌でかき混ぜられて、胸の先まで中から撫でられているような、言い様のないもどかしさが込み上げる。
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