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一夜の愛、人との愛
第13章 金の拘束
「んっ……、ッ……」

裏筋に一瞬、女の歯が当たれば、熱の先端がピクリと動く。

不慣れな口淫が、逆に予期しない刺激になり、互いの間に流れる空気を濃密に染めていく。

温かい舌に太く脈打つ幹を何度も根本から舐め上げられて、不意にザレムが腹筋に力を込めた。

「……ッ! 待てっ…」

自分の手でやるよりも遥かに心地よい滑った快感に、思わずザレムが声を上げた。

動きを止めた真理亜が、やるせない表情でザレムを見上げる。

セミロングの髪が揺れて、汗で湿った頬に張り付いていた。

この建物の魔力なのか、果てを味わい快楽の渦に囚われているせいかは知らないが、その顔には、明らかな情欲の色が浮かんでいる。

「俺に、またがれ。正面から」

命じる声が、何故か震える。

わけも無く動揺するザレムに気かないまま、熱に浮かされた真理亜はゴクリと口腔に溜まった唾液を飲み込みながら身体を起し、両手を男の逞しい首に回した。

真理亜は、少し前まで快楽に抗おうとしていたのが嘘のように、この場所に淀む甘い蜜のような空気に酔っている。

女の身体を正面から見据え、ザレムは小さく熱い息を漏らした。

自分に近づき、胡座の足をまたぎながら、両膝をザレムの太腿より外側へと絡めていく真理亜の姿は、暗闇の中でも薄桃色に淡く光ってみえるほど官能的だ。

一瞬ザレムの顔を伺ってから、真理亜がおずおずと両手を天使の首に回す。

呼吸に合わせて上下に揺れる胸元の膨らみと、その先端で強い刺激を求めて膨らむ突起が、男の目の前に近寄った。

柄にもなく「綺麗だ」と意識した途端、げんきんな欲望がぐっと張りを増す。

「……んっ」

けれど、ザレムが何か言うよりも、真理亜が自分の蕾に固い熱の突端を押し当てる方が早かった。

「……!」

はっとして真理亜の顔を見やる。

真理亜もザレムを見下ろしていた。

強制的に奥から濡らされていく身体を持て余し、彼女は、涙を澑めた瞳でザレムを見つめ、何か言いたげに赤い唇を震わせている。

「マリア…」

駄目だ、と告げて、女を止めるタイミングだと気付きながら、ザレムは真理亜の表情に見惚れ、制止をかけあぐねる。
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