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一夜の愛、人との愛
第16章 気配

空が黄色い。
ザレムと真理亜が出発してから数日経った。
天使の住まう館は、二人が”裁きの森”へ発った後も、微塵の変化も無く、普段と同じ穏やかな時間を紡いでいる。
コーラルは自室の部屋のテラスから、緑一色に染まった草原を眺めつつ、無意識に溜息をついていた。白い手摺に両腕を預け、地平線の辺りをじっと見つめる彼の視界の中では、胡座をかいた赤毛の天使も、のんびりと同じ方向を見ながら空中に浮かんでいる。
その視線の先に、何かを探っているらしく、二人は和やかに言葉を交わそうともしない。
と、部屋の主が、そっと唇を開いた。
「聞こえるか? チェイス」
「んー……。何も、聞こえない」
コーラルの問いに、真剣な表情のまま一つ瞬いたチェイスは、身体の力を抜きながら、申し訳無さそうに答え、チラリと背後を振り返る。
「”裁きの森”は、エデンとは違う領域にあるって、……」
知ってるじゃん、と続けようとした言葉を、もどかしげな様子で若い天使は飲み込んだ。
美しい顔立ちを曇らせ、じっと地の果てを見つめるコーラルは、森へ向かった2人の身を案じているに違いない。
その思いに気付いた少年には、この世界の真理を語ることなんて、無粋な真似に感じられた。
ザレムと真理亜が出発してから数日経った。
天使の住まう館は、二人が”裁きの森”へ発った後も、微塵の変化も無く、普段と同じ穏やかな時間を紡いでいる。
コーラルは自室の部屋のテラスから、緑一色に染まった草原を眺めつつ、無意識に溜息をついていた。白い手摺に両腕を預け、地平線の辺りをじっと見つめる彼の視界の中では、胡座をかいた赤毛の天使も、のんびりと同じ方向を見ながら空中に浮かんでいる。
その視線の先に、何かを探っているらしく、二人は和やかに言葉を交わそうともしない。
と、部屋の主が、そっと唇を開いた。
「聞こえるか? チェイス」
「んー……。何も、聞こえない」
コーラルの問いに、真剣な表情のまま一つ瞬いたチェイスは、身体の力を抜きながら、申し訳無さそうに答え、チラリと背後を振り返る。
「”裁きの森”は、エデンとは違う領域にあるって、……」
知ってるじゃん、と続けようとした言葉を、もどかしげな様子で若い天使は飲み込んだ。
美しい顔立ちを曇らせ、じっと地の果てを見つめるコーラルは、森へ向かった2人の身を案じているに違いない。
その思いに気付いた少年には、この世界の真理を語ることなんて、無粋な真似に感じられた。

