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一夜の愛、人との愛
第16章 気配

(……)
若い天使の気遣いに気付き、コーラルが微かに微笑む。
そのまま一度俯き、思い悩むように手すりを睨んでから、彼は深呼吸してから、再びチェイスへ顔を向け直した。
「分かってる。それでも、お前の耳なら、聞こえるかもしれないと思ったんだ」
「うん」
沈み込みすぎることもなく、会話を続けてくれた相手に、チェイスは身体を伸ばしながら「んー」と声を漏らす。
「元気でやってんのかな。あいつら」
吹っ切るような明るい声に、コーラルも不安な感情を解き放とうと強張っていた表情を緩めて微笑んだ。
その腕の隣、手摺の上に、ルシオがひょいと飛び乗る。
無言のまま、コーラルの腕に寄り添う、心地よさそうに目を閉じ、甘えるように頬をすり寄せてくる。
「……元気に、やってるらしい」
ルシオの頭を撫でながら紡いだ声は、意図しなくても、幾らか安堵が混じった。
その言葉に、ひょいと振り向いたチェイスが、ルシオの動きに首を傾げる。
「相変わらず懐いてるよなー。俺には、さっぱりなのに」
唇を尖らせて、ルシオの頭を撫でようと赤毛の彼が手を伸ばすも、気配を察したのか、白い獣は、ふいと身体を翻し、室内に戻ってしまう。
これまでもチェイスは、あの柔らかな毛並みに触れようとして、つれなくされたことが多々あった。
がっくりと肩を落とす青年に、コーラルが優しい眼差しを向ける。
と、二人の耳に、鈴の音が呼び出しを告げる。
半人前の天使が受けるべき、天使長による講義の合図だ。
目を合わせた二人は、やや表情を引き締めつつ、部屋を後にすると、建物の上層階へ移動を始めた―――。
若い天使の気遣いに気付き、コーラルが微かに微笑む。
そのまま一度俯き、思い悩むように手すりを睨んでから、彼は深呼吸してから、再びチェイスへ顔を向け直した。
「分かってる。それでも、お前の耳なら、聞こえるかもしれないと思ったんだ」
「うん」
沈み込みすぎることもなく、会話を続けてくれた相手に、チェイスは身体を伸ばしながら「んー」と声を漏らす。
「元気でやってんのかな。あいつら」
吹っ切るような明るい声に、コーラルも不安な感情を解き放とうと強張っていた表情を緩めて微笑んだ。
その腕の隣、手摺の上に、ルシオがひょいと飛び乗る。
無言のまま、コーラルの腕に寄り添う、心地よさそうに目を閉じ、甘えるように頬をすり寄せてくる。
「……元気に、やってるらしい」
ルシオの頭を撫でながら紡いだ声は、意図しなくても、幾らか安堵が混じった。
その言葉に、ひょいと振り向いたチェイスが、ルシオの動きに首を傾げる。
「相変わらず懐いてるよなー。俺には、さっぱりなのに」
唇を尖らせて、ルシオの頭を撫でようと赤毛の彼が手を伸ばすも、気配を察したのか、白い獣は、ふいと身体を翻し、室内に戻ってしまう。
これまでもチェイスは、あの柔らかな毛並みに触れようとして、つれなくされたことが多々あった。
がっくりと肩を落とす青年に、コーラルが優しい眼差しを向ける。
と、二人の耳に、鈴の音が呼び出しを告げる。
半人前の天使が受けるべき、天使長による講義の合図だ。
目を合わせた二人は、やや表情を引き締めつつ、部屋を後にすると、建物の上層階へ移動を始めた―――。

