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一夜の愛、人との愛
第17章 感知
身体が重だるい。
真っ暗な闇の中、真理亜は指先一つ動かすことが出来ずに、のしかかる重みに翻弄されるまま静寂に沈み込んでいた。
覆いかぶさる重力は生暖かく、息づいているようにも感じられる。
(なん、だろ…)
何とか瞼を持ち上げると、赤黒いヴェールに包まれた木々の姿が微かに見えた。
どうやら自分は仰向けに倒れているらしい。
(あ、れ)
身体を起こそうとしたが、力が入らない。
森の暗闇に痺れているようにも感じるが、それだけでは無い。
太腿の辺りが温かく、生き物の気配を感じた。
(何…?)
ルシオのような温もり。
けれど、もっと大きな、人間のような大きさの温かさが、脚に寄り添っている。
視線を向けようとした瞬間、誰かが顔を覗き込んできた。
不意に視界を覆われた、その距離が近すぎて、金色の瞳しか認識できない。
闇に光る、金色の瞳と黒く鋭い瞳孔―――。
その輪郭に、真理亜は見覚えがあった。
「ザ、レム?」
かすれた声で尋ねた瞬間、その温かい重みは真理亜の横に身体を滑らせて、小さく笑った。
笑った吐息が、聞こえた。
「ザレム? それが、あの天使の名前か」
見知らぬ相手の声に、真理亜の胸が違和感で震える。
隣を伺おうと何とか顎を動かせば、彼女の動きを補完するように、男は自ら真理亜の視線の先に顔を斜めに傾けてきた。
黒髪に白い耳。
その耳さえなければ、整った顔立ちの青年に違いないが、彼を見た真理亜の胸はざわめく一方だった。
笑っているはずなのに、彼の眼差しはゾッとするほど冷ややかなのだ。
男の表情からは、獲物をいたぶって悦に入る加虐心のようなものが滲み出ていた。
真っ暗な闇の中、真理亜は指先一つ動かすことが出来ずに、のしかかる重みに翻弄されるまま静寂に沈み込んでいた。
覆いかぶさる重力は生暖かく、息づいているようにも感じられる。
(なん、だろ…)
何とか瞼を持ち上げると、赤黒いヴェールに包まれた木々の姿が微かに見えた。
どうやら自分は仰向けに倒れているらしい。
(あ、れ)
身体を起こそうとしたが、力が入らない。
森の暗闇に痺れているようにも感じるが、それだけでは無い。
太腿の辺りが温かく、生き物の気配を感じた。
(何…?)
ルシオのような温もり。
けれど、もっと大きな、人間のような大きさの温かさが、脚に寄り添っている。
視線を向けようとした瞬間、誰かが顔を覗き込んできた。
不意に視界を覆われた、その距離が近すぎて、金色の瞳しか認識できない。
闇に光る、金色の瞳と黒く鋭い瞳孔―――。
その輪郭に、真理亜は見覚えがあった。
「ザ、レム?」
かすれた声で尋ねた瞬間、その温かい重みは真理亜の横に身体を滑らせて、小さく笑った。
笑った吐息が、聞こえた。
「ザレム? それが、あの天使の名前か」
見知らぬ相手の声に、真理亜の胸が違和感で震える。
隣を伺おうと何とか顎を動かせば、彼女の動きを補完するように、男は自ら真理亜の視線の先に顔を斜めに傾けてきた。
黒髪に白い耳。
その耳さえなければ、整った顔立ちの青年に違いないが、彼を見た真理亜の胸はざわめく一方だった。
笑っているはずなのに、彼の眼差しはゾッとするほど冷ややかなのだ。
男の表情からは、獲物をいたぶって悦に入る加虐心のようなものが滲み出ていた。