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一夜の愛、人との愛
第18章 刻印
「……や」
思わず、声が漏れた。
理屈ではなく、半ば本能的に、正面に立つ男の二の腕に指をかけてしまう。
一瞬、真理亜の顔を見てから、男は自分の手元に視線を戻す。
「何でもするんじゃ、なかったのか?」
「そ、れは」
「別に、このまま森を抜けても構わない。マーキングは、俺の義務では無く、単なる権利だ」
「権利……」
「そうだ。”イザヤの実”を求めるものに、俺がすべきことは、本来一つだけだ。次に進むべき道を示すこと。これは義務だ。だが、もし来訪者が人間ならが、獣人の嗅覚から人間は逃れることは出来ない。だから印をつけて、獣が余計な手出しをしないように牽制してやることは出来る」
「じゃあ、印を付けずに」
「進むことも出来る。まぁ、フローの縄張りを抜けたら、狐に騙されてミンチにされるのが関の山だろうがな」
世間話でもするように、軽い口調で告げると、男は真理亜の顔を覗きこんだ。
「講釈は後回しだ。さっさと済ませないと、お前の連れがここに来る」
「!」
その言葉に、真理亜の視線が揺れる。
「あの天使にお前が守れると思うか? ここは、あいつの世界じゃない。俺達の世界だ」
「……」
「脱がすぞ」
男は今度こそ手を止めることなく、躊躇った真理亜の服を下から一気に引き上げ、頭から引き抜いた。
(やだ…)
両腕で胸を覆ってしまう。
仮に相手が自分と違う世界の存在だとしても、自分の瞳を伺ってくる男の顔は人間と変わらない。
しかも年が離れているようにも見えないし、こんなに明るい場所で、上半身だけとは言え、裸にされてしまったら、恥ずかしくて溜まらなかった。
「見せろ」
脱がせた服を足元に落とした男が、真理亜の指を握り胸前から引き剥がそうとする。
無意識に力が篭もり、顔を逸らした直後、小さな舌打ちの音に身体が震えた。
肩が震えて羞恥と恐怖が綯い交ぜになっている。
「……」
男が再び手に力を込めた。
人間と同じ右手だけでは無い。
獣の左手は、彼女の白い肌に僅かに黒い爪を食い込ませている。
真理亜は一度目をぐっと瞑ると、細い息を吐きながら、男の力に任せて腕の力を抜いた。
思わず、声が漏れた。
理屈ではなく、半ば本能的に、正面に立つ男の二の腕に指をかけてしまう。
一瞬、真理亜の顔を見てから、男は自分の手元に視線を戻す。
「何でもするんじゃ、なかったのか?」
「そ、れは」
「別に、このまま森を抜けても構わない。マーキングは、俺の義務では無く、単なる権利だ」
「権利……」
「そうだ。”イザヤの実”を求めるものに、俺がすべきことは、本来一つだけだ。次に進むべき道を示すこと。これは義務だ。だが、もし来訪者が人間ならが、獣人の嗅覚から人間は逃れることは出来ない。だから印をつけて、獣が余計な手出しをしないように牽制してやることは出来る」
「じゃあ、印を付けずに」
「進むことも出来る。まぁ、フローの縄張りを抜けたら、狐に騙されてミンチにされるのが関の山だろうがな」
世間話でもするように、軽い口調で告げると、男は真理亜の顔を覗きこんだ。
「講釈は後回しだ。さっさと済ませないと、お前の連れがここに来る」
「!」
その言葉に、真理亜の視線が揺れる。
「あの天使にお前が守れると思うか? ここは、あいつの世界じゃない。俺達の世界だ」
「……」
「脱がすぞ」
男は今度こそ手を止めることなく、躊躇った真理亜の服を下から一気に引き上げ、頭から引き抜いた。
(やだ…)
両腕で胸を覆ってしまう。
仮に相手が自分と違う世界の存在だとしても、自分の瞳を伺ってくる男の顔は人間と変わらない。
しかも年が離れているようにも見えないし、こんなに明るい場所で、上半身だけとは言え、裸にされてしまったら、恥ずかしくて溜まらなかった。
「見せろ」
脱がせた服を足元に落とした男が、真理亜の指を握り胸前から引き剥がそうとする。
無意識に力が篭もり、顔を逸らした直後、小さな舌打ちの音に身体が震えた。
肩が震えて羞恥と恐怖が綯い交ぜになっている。
「……」
男が再び手に力を込めた。
人間と同じ右手だけでは無い。
獣の左手は、彼女の白い肌に僅かに黒い爪を食い込ませている。
真理亜は一度目をぐっと瞑ると、細い息を吐きながら、男の力に任せて腕の力を抜いた。