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一夜の愛、人との愛
第18章 刻印
自分を見つめる男の顔には、何の感情も伺えない。
その冴えた表情が、むしろ真理亜には支配者の余裕に映り、背筋がスッと寒くなった。
鋭い視線が、真理亜の顔から項に移動すると、それだけでナイフの切っ先で皮膚を辿られている気分になる。

「印って…」

本能的な不安で、真理亜は無意識に石から腰を浮かせた。
ゆっくり立ち上がる姿を、じっと観察されて、緊張から心臓の鼓動がドクドクと早くなってくる。
これは試練なんだから、と頭では分かっていても、服を脱げと言われて、素直に脱げるほど自分には余裕は無い。

真理亜の不安と怯えに気付いているのか、男は強張った空気をほぐすように吐息だけで笑う。

「そんなにビクつくな。印は三箇所。お前のうなじ、背中、足の付け根に付けるだけだ」

男は事務的に近づくと、真理亜の頬に右手を添えた。

「印は森を出れば消える。印を付けずに森を歩いても構わないが、知恵のある獣は、お前が目的を喋るより前に、この身体を嬲って、喉元を掻っ切るぞ」
「でも、脱がなくても―――」
「脱がせた方が事がスムーズに運ぶ。俺の経験上」

躊躇う彼女の言葉尻に声を被せ、金髪の男は両手を真理亜の服の裾にかけ、ゆっくり捲り出す。

「隠したい場所があるなら隠して構わない。ただ、まず、フローの爪痕だけは見せろ。天使の服を着ていても、お前からは血の匂いがする」
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