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一夜の愛、人との愛
第2章 朝8時のハプニング
「お急ぎの所、誠に申し訳ありません。途中駅、急病人の対応のため、この電車、15分遅れての運行となっております」
車掌のアナウンスを聞きながら、揺れる車内で、真理亜は隣のサラリーマンに支えられて、かろうじて立っていた。
電車が発射した瞬間、体が一気に熱い渦に飲み込まれ、彼女は立ったまま快感の果てに押し上げられた。その余波は、走りだして1駅目を過ぎたにも関わらず、容易に収まってくれない。
呼吸の荒さで乾いた唇を舐め、やっとサラリーマンから体を離すと、真理亜は、いつのまにか自由になっていた左手でストッキングと下着を適当に引き上げた。
下着が湿っている気がする。
(気にしちゃダメ)
もう、次は、こちら側の扉が開いてしまうはずだ。
まだ、いささか靄のかかっている頭で、右手を下に伸ばし鞄を取ると、シャツの上からブラジャーの位置を整えた。
俯くと、涙が出そうになる。
その表情をセミロングの髪で隠し、真理亜は深呼吸する。
(大丈夫。私は、大丈夫・・・)
今更、怖くて隣が見られない。
背後の気配さえ、見ることが出来ない。
真理亜が達したことで、下肢をもてあそぶ指は引いていったが、今、何か動いて、それ以上の標的になったら、もう電車にさえ乗れるか分からない。
(大丈夫よ、真理亜。大丈夫)
鞄を胸の前で抱えて、自分に言い聞かせると、降りる駅がドア窓から見えてきた。
(ちゃんと、逃げ切れる。大丈夫)
ドアが開いたら、全力で走って、会社までの人混みに紛れようと決める。
もし、誰かが追いかけてきたら―――。
真理亜は、ほんの一瞬、隣のサラリーマンを盗み見た。
だが、彼女が目撃したのは男の意外な表情だった。
彼は、何か信じられないことでも起きたような、困惑と苦渋の色を、その眉間に滲ませていたのだ。
車掌のアナウンスを聞きながら、揺れる車内で、真理亜は隣のサラリーマンに支えられて、かろうじて立っていた。
電車が発射した瞬間、体が一気に熱い渦に飲み込まれ、彼女は立ったまま快感の果てに押し上げられた。その余波は、走りだして1駅目を過ぎたにも関わらず、容易に収まってくれない。
呼吸の荒さで乾いた唇を舐め、やっとサラリーマンから体を離すと、真理亜は、いつのまにか自由になっていた左手でストッキングと下着を適当に引き上げた。
下着が湿っている気がする。
(気にしちゃダメ)
もう、次は、こちら側の扉が開いてしまうはずだ。
まだ、いささか靄のかかっている頭で、右手を下に伸ばし鞄を取ると、シャツの上からブラジャーの位置を整えた。
俯くと、涙が出そうになる。
その表情をセミロングの髪で隠し、真理亜は深呼吸する。
(大丈夫。私は、大丈夫・・・)
今更、怖くて隣が見られない。
背後の気配さえ、見ることが出来ない。
真理亜が達したことで、下肢をもてあそぶ指は引いていったが、今、何か動いて、それ以上の標的になったら、もう電車にさえ乗れるか分からない。
(大丈夫よ、真理亜。大丈夫)
鞄を胸の前で抱えて、自分に言い聞かせると、降りる駅がドア窓から見えてきた。
(ちゃんと、逃げ切れる。大丈夫)
ドアが開いたら、全力で走って、会社までの人混みに紛れようと決める。
もし、誰かが追いかけてきたら―――。
真理亜は、ほんの一瞬、隣のサラリーマンを盗み見た。
だが、彼女が目撃したのは男の意外な表情だった。
彼は、何か信じられないことでも起きたような、困惑と苦渋の色を、その眉間に滲ませていたのだ。