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一夜の愛、人との愛
第3章 午後1時のリスニング
(・・・・・・わ)
呆然と立ち尽くす真理亜から顔を離すと、斉藤は資料を胸前に抱えて、女子さながらの態度で2,3歩、後ずさった。
その表情は、真理亜よりも驚愕に溢れている。
「ご、ごめん!」
斉藤は、真理亜の肩に右手を伸ばしかけるも、思い直したか素早く引っ込め、その手で額を抱えた。
お互い、相手の顔さえ見れず、自然と視線が足元に向いてしまう。
「俺・・・」
「あの! し、仕事に、戻ります、私」
真理亜が、相手の靴先を見つめたまま、早口で言い切った。
とりあえず、今はキスの意味を考える時間じゃない。自分が斉藤のことを、どう思っているかも分からない。
嫌悪や拒絶を感じるより前に、気づいたら、触れていたのだ。
(・・・)
目元ばかりか、頬も赤らめたまま、真理亜は一礼すると、素早く廊下を抜けて扉にカードキーを押し当てた。
フロアに入り、自分の席へ急ぐ。
ヒールの音のせいだろうか。周りの視線を感じるが、それは、さっきの件で自意識過剰になっているせいだと、自分に言い聞かせた。
デスクに着くと、隣の雪子が片手を上げて、『お帰り』と合図をくれる。
真理亜は深く息を吐いて、気持ちを切り替えると、ヘッドセットを装着した。
呆然と立ち尽くす真理亜から顔を離すと、斉藤は資料を胸前に抱えて、女子さながらの態度で2,3歩、後ずさった。
その表情は、真理亜よりも驚愕に溢れている。
「ご、ごめん!」
斉藤は、真理亜の肩に右手を伸ばしかけるも、思い直したか素早く引っ込め、その手で額を抱えた。
お互い、相手の顔さえ見れず、自然と視線が足元に向いてしまう。
「俺・・・」
「あの! し、仕事に、戻ります、私」
真理亜が、相手の靴先を見つめたまま、早口で言い切った。
とりあえず、今はキスの意味を考える時間じゃない。自分が斉藤のことを、どう思っているかも分からない。
嫌悪や拒絶を感じるより前に、気づいたら、触れていたのだ。
(・・・)
目元ばかりか、頬も赤らめたまま、真理亜は一礼すると、素早く廊下を抜けて扉にカードキーを押し当てた。
フロアに入り、自分の席へ急ぐ。
ヒールの音のせいだろうか。周りの視線を感じるが、それは、さっきの件で自意識過剰になっているせいだと、自分に言い聞かせた。
デスクに着くと、隣の雪子が片手を上げて、『お帰り』と合図をくれる。
真理亜は深く息を吐いて、気持ちを切り替えると、ヘッドセットを装着した。