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一夜の愛、人との愛
第5章 白亜の建物
それにしても、納得出来ない。

真理亜は複雑な表情のまま、前を歩く背中を追いかけて歩いていた。

(普通は、もうちょっと、こう、・・・)

今日は衝撃的なことがありすぎて、考えがまとまらないが、何か足りていない気がする。



今、真理亜は白亜の建物の中、目の前の2人に続いて歩いていた。

建物は、城のような形状で、玄関扉を抜けると左右に大きな階段があり、奥には泉が見える。

泉の上は吹き抜けになっており、天井が遠く、その部分は建物の中に塔が融合したデザインだ。







真理亜は、この地に、瞬く間に辿り着いていた。

―――名前を、お聞きしても、良いですか?

白い男に尋ねられて、名前を告げながら、その手に自分の手を重ねた。

直後、強く瞳に刺さる光に包まれ、彼女の体は糸が切れた人形のように力を失った。

一瞬の脱力の後、目を閉じた彼女が再び目を開くと、そこにベランダは無く、手すりも無く、夜空も無くなっていた。

自分は白い男の腕の中に抱えられ、見知らぬ大地を見渡していたのだ。

あっけに取られて口を開けたまま隣を見れば、黒い男の背中で、漆黒の翼がもがくように閉じられていくところだった。



(てっきり、自己紹介とか、説明とか、・・・ほら)

そう。

真理亜は、『相手の名前が何なのか』『自分が何処に行くのか』『何故行かなくてはならないのか』、そんな説明があると思っていたのだ。

欲張って言うなら、夜空を切り裂くように、美しい翼がはばたく姿も見たかった。

それが、一瞬、瞬きしただけで、見知らぬ大地へ連れてこられてしまったのだ。





広がる緑の草原は美しく、白く輝く建物は美しかったが、陽気にはしゃげるほどには、彼女は子供にもなれなかった。





前を歩く二人の足がとまり、真理亜も立ち止まる。

上へ続く大きな階段と、その横に、下へ続く薄暗く細い階段がある。

階段脇にいた細身の男が、白い男と目を合わせ、小さく頭を下げた。

階段を駆け下りていく細身の男を見送りながら、白い男が口を開く。

「お前の処遇は天使長様に委ねる。それまで地下に入っていろ」



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